カメラおいしい

撮影させて頂いた方をプレゼンするblog

三千世界の鴉が憎い。

10月某日

乱藤四郎&堀川国広

model:楓嗣さん
ジャンル:刀剣乱舞



あなたとのご縁が絡み合い
そうして過ごす時間は
蜜色のようだ (意訳)

 


熱烈な恋文を贈られてしまった。
真っ直ぐな瞳に射抜かれて。


これに応えぬとは、
カメラマンとして如何なものか。

脳髄の端から
ちりちりと灼ける焦燥を抑え、
今宵は長い返歌をしようと思う。


ーー

 

 

月に10回前後の撮影を組むので、
私は捕まえにくいカメラマンだ。
断りをいれる事も少なくない。

だが、
稀に都合が付かずに、
2日くらい空くことがある。

そこでご縁があった美しい人。
楓嗣さん。

 

《ずっと万喜さんの作品を拝見しており、撮影の機会を伺っておりました》


開口一番こう口説かれて、
本気以外の何を出せというか。
もちろんいつだって本気だが、
最初からブーストが入ってしまった。


完全に骨抜きにされた。

 

美しい白百合の蕾の中に、
とんでもない物を隠し持っている。

幾重に折り畳む花弁のなかに、
とてつもなく、
研ぎ澄まされて美しい、
鋭利な感性。


これは、
想像以上の撮影になる。

予感めいたものが、
脳髄にゆらりと蠢いていた。


ーー


今思い返せば、
初めから私は彼女の掌中にいた。

シェアスタジオの白ホリ。
私は初対面の方とは、
必ず無難な背景から撮り始める。
人柄を把握するためだ。

 

 

無の白ホリで作り出せる人、
逆にシチュエーションで攻めてくる人、
実に様々いらっしゃる。

優劣ではなく、
得意分野の違い。


彼女は、どちらもいける。

 

 

堀川くんにしっくりこなくて、
と、DMで交わしていたはにかみの言葉。
嘘だ、と思った。

 

百合を片手に抱き、
柔和に微笑む姿は、
まさしく堀川国広そのもの。

自分の好みを
ちゃんと分かっている。
どう見せたいか、
しっかりと把握している。


自ら姿見を移動させ、
ポージングをチェックする
自発的な行動に、
自ら提案し、動いていく姿に
「いったい何がしっくりこないのか」と
疑問しか浮かばない。


こんな初めから完璧な方が、何故。

 

それは、すぐに判明した。

 

上階にある赤い格子があるブースで、
彼女は文字通り「花開いた」

 

 

ふとした時。

楓嗣さんが
深紅の格子に背もたれ、
遠くに投げられた視線に、
ざわりと背筋が粟立った。

 

「すみません、自分の首を締めてみてください」

 


初対面の方に何をいってるんだろう。
気でも狂ったのか、私は。

頭の片隅で自分を戒めつつも、
そう言わずにいられなかったのだ。


はい


ゆうるりと微笑んで、
受け入れた彼女は、
衣装の一部を解き、
ほっそりした首を晒して、

指を絡めた。


彼女は、
シチュエーションも空気も、
あまつさえ、

堀川国広を飲み込んだ。

 

凄絶な艶を帯びた空気は
一瞬で全てを変えた。

 

それから続いた、

互いの応酬をなんと言えばいいか。


恋でもなければ、
駆け引きでもなくて。


あれがね、こうしてね、
と、喋りたくて口が開くも、
あの日の情景が浮かべば、
やっぱり秘密、と指が口を塞ぐ。


肌を撫ぜた雨の空気も、雫も、
腕が伸ばされ、
優雅に弧を描いたシルエットさえも、
どれもが極上で仕方なくて、
言葉にすると途端にやすっぽくなる。


ただ、ひとつ言えるとするなら。
楓嗣さんが乱、堀川が似合う所以。

想像もつかない所に、武器をもっていること。
あれは天性のもの。


沢山の人に見せてほしい。
けど、
余り大っぴらにされると、
妬けてしまう。


だから、
あの日の撮影は、
秘密に止めておきたい。


赤裸々に語られたお話も、
私が感極まってしまった事も。

 

写真の神さまはいるんだと思い、

今までの撮影のことが頭を巡り、

嬉しくって、枕を濡らしてしまったことも。


ーー

 

三千世界の鴉を殺し
主と......がしてみたい。



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